2.『Babygirl』が描いた、支配されたいという欲望は、なぜ人を夢中にさせるのか
― 支配されたい気持ちと、相手を失いたくない気持ちは意外と近い ―

ロミーがサミュエルに惹かれた理由を考えるとき、
「理解されたかったから」
という説明だけでは足りないように思う。
彼女はもっと直接的なものを求めていた。
それは、
支配されること。
主導権を委ねること。
普段の自分ではいられない時間を持つことだった。
仕事では常に判断する側。
人を導く側。
責任を負う側。
そんなロミーにとって、
誰かに委ねることは特別な体験だった。
人に支配される、やすらぎ
人に支配される、自由
その解放感は、単なる性的刺激以上のものだったのかもしれない。
しかし興味深いのはここからだ。
ロミーは単に支配される体験だけを求めていたわけではない。
サミュエルが他の女性と親しくする姿を見ると、
明らかに感情が揺れる。
嫉妬する。
失いたくないと思う。
つまり彼女は、
「支配されたい」
だけでなく、
「その相手を独占したい」
とも思い始めている。

考えてみれば不思議な話だ。
自分は相手に支配されたい。
所有されたい。
委ねたい。
しかし同時に、
その相手を自分のものにもしたい。
一見すると矛盾している。
だが実際には、この二つはとても近い。
誰かに深く委ねるほど、
その相手は特別な存在になる。
特別な存在になれば、
失いたくなくなる。
自分だけを見ていてほしくなる。
ロミーの嫉妬は、
単なる恋愛感情だけではなく、
支配関係の中で生まれた強い執着にも見える。

『Babygirl』が描いているのは、
支配する者とされる者という単純な関係ではない。
人を支配したい気持ちと、
支配されたい気持ち。
所有したい気持ちと、
所有されたい気持ち。
その境界は案外曖昧なのだ。
ロミーはサミュエルに支配されたいと思った。
しかし同時に、
サミュエルを失いたくなかった。
その矛盾が、彼女をさらに深く惹きつけていったのかもしれない。
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