『Babygirl』が描いた、完璧に見える女性の本当の欲望
目次
― 自立した女性ほど、自分でも知らなかった一面に向き合う ―
映画『Babygirl』を観た。

この作品を観ようと思ったきっかけは、主演のニコール・キッドマンだった。
自分は以前から彼女の出演作を観てきたが、特に強く印象に残っている作品がある。
それが『ドッグヴィル』だった。
あの作品のニコール・キッドマンは、ただ美しい女優というだけではなかった。
凛とした美しさがありながら、その奥にはどこか不安定さや危うさを感じさせる。
優雅なのに、簡単には触れられないような雰囲気。
強さと脆さを同時に持っているような、独特の存在感がある女優だと思う。
年齢を重ねるほど、単なる美貌ではなく、人生を重ねた女性の複雑さまで表現できるところも魅力だ。
『Babygirl』は映画館で一度みていたが、アマプラで配信されていたので、改めて観直してみた。
そしてこの映画は、単なる刺激的な恋愛映画ではなく、
「女性が、自分でも認められていなかった欲望と向き合う物語」
なのではないかと感じた。
『Babygirl』のあらすじ
主人公ロミーは、大企業を率いるCEO。
仕事では成功を収め、周囲から信頼される存在。
家庭では夫と子供に囲まれ、一見すると何も不足していない人生を送っている。
能力があり、自分の力で人生を築いてきた女性だ。
しかし、ロミーには誰にも見せていない一面があった。
彼女は自分の中にある性的な欲望や感覚を、長い間他人には出さずに生きてきた。
夫との関係も決して壊れているわけではない。
夫は優しく、愛情もある。
けれど、ロミーの内側には、言葉にできない満たされなさが残っていた。
そんな彼女の前に現れるのが、若いインターンのサミュエル。
サミュエルは、社会的な立場ではロミーより下の存在に見える。
しかし彼は、彼女が普段見せている「完璧な女性」という姿の奥にあるものを感じ取るような存在だった。
その出会いによって、ロミーは今まで抑えていた感情や、自分でも知らなかった欲望と向き合うことになる。
仕事では人を導く立場。会社では判断をする立場。
常に自分をコントロールしてきた女性が、プライベートできなかった自分自身の心と欲望に向き合っていく。
それが『Babygirl』の物語だ。
すべてを手に入れたように見える女性
ロミーは、決して不幸な女性ではない。
むしろ現代社会では、成功した女性の象徴のように見える。
仕事で認められる。
経済的にも自立している。
家庭もある。
自分の人生を自分で選んできた。
それは簡単なことではない。
多くの努力があったはずだ。
しかし、この映画が興味深いのは、
「世間的に成功していること」と「自分の欲望を満たしていること」は別だ、
という部分だと思う。
人は人生の中で、いくつもの役割を持つ。
仕事の自分。家庭の自分。
社会から見える自分。
そして、自分だけが知っている自分。
ロミーの場合、その最後の部分に向き合うことになる。
愛されているのに、満たされない

『Babygirl』の特徴は、夫が悪者として描かれていないことだと思う。
夫は優しい。
ロミーを大切にしている。
家庭を守ろうとしている。
だからこそ、この物語は単純ではない。
「愛がないから別の相手を求める」
という話ではないからだ。
人間の欲望や感覚は、愛情だけですべて説明できるものではない。
愛情と欲望(性的に満たされること)は別なんだと思う。
ロミーは、自分の中にある欲望を否定していたわけではない。
夫にも自分の欲望を満たしてもらおう努力もしている。
しかし、相手もそれを理解できる人でないと難しい、満たされる場所を持てなかった。
そこに彼女の孤独がある。
欲望は、弱さではない

人は時々、
「こんなことを望む自分はおかしいのではないか」
と思う。
特に、自分で人生を切り開いてきた人ほど、
理性的であること。
常識的であること。
正しくあること。
を大切にする。
しかし、人間の内側はもっと複雑だ。
誰にでも、人には見せていない部分がある。
普段の自分とは違う一面。
言葉にするのが難しい願望や欲望
心の奥にある、小さな違和感。
それを持つこと自体が問題なのではない。
大切なのは、それを自分自身がどう理解するかだ。
自分の中にいる、もうひとりの自分

『Babygirl』が描いているのは、人生を壊してしまう女性の話ではない。
完璧に見える人生を歩いてきた女性が、
「私は本当は何を求めているのか」
に向き合う物語だと思う。
表には出していない感情や欲望がある。
それを知ることは、弱さではなく、自分自身を深く理解することなのかもしれない。
『Babygirl』は、
「完璧な女性になること」ではなく、
「本当の自分を受け入れること」
について考えさせられる映画だった。
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