日本のSMとポップカルチャー:映画や文学、漫画におけるSMの描写とその影響
日本のポップカルチャーにおいて、SM(サドマゾヒズム)はしばしば描かれ、その描写は多岐にわたります。映画や文学、漫画などのメディアを通じて、SMはただの性的趣向としてだけでなく、深い人間関係や心理の探求手段としても表現されています。そんな日本のポップカルチャーにおけるSMの描写 って何があったのだろうか考えたいと思います。
目次
1. 映画におけるSM
日本映画において、SMは時にセンセーショナルに、時に繊細に描かれています。特に注目すべきは、1970年代から1980年代にかけての「ピンク映画」や「ロマンポルノ」と呼ばれるジャンルです。自分が子供のころは街中にそんなポスターが貼られて入れ、子供心にもドキドキしたのを覚えています。
代表的な作品
- 『花と蛇』シリーズ: 「花と蛇」は、団鬼六の小説を原作とし、何度も映画化されている作品です。緊縛や調教といったSMの要素が色濃く描かれ、主人公の女性が次第に自分の中の新たな欲望を発見していく過程が描かれています。 特に、2004年に監督の石井隆によって制作されたバージョン(1、2)は、緊縛を中心に据え、エロティシズムと芸術性を巧みに融合させていて好きな作品です。この映画では、美しい緊張美の映像と共に、SMの魅力も出ていると思います。このような作品が以降あまりでていなないのは残念かと思います。
- 『縄師 Bakushi』 もう一つの例として挙げられるのは、2007年に公開された『縄師』。この映画は、廣木隆一監督のドキュメンタリーで、先のSM映画「花と蛇」で緊縛指導を担当した有末剛ら3人の現役縛師に密着されいます。信頼関係のもとで行なわれる縛師とモデルと関係から日本独特の文化である「緊縛」の本質とはを窺える作品です。
これらの作品は、SMを通じて人間の内面的な欲望や葛藤を描きました、きっと興味のある方は一度は目にしている作品かと思います。
2. 文学におけるSM
日本文学においても、SMは重要なテーマとして取り上げられてきました。著名な作家たちがSMを題材にした作品を発表し、その文学的価値を高めています。
代表的な作家と作品
- 谷崎潤一郎: 谷崎潤一郎は明治43年(1910年)に「刺青」を発表してから、大正、昭和と活躍した文豪です。マゾヒズムや老人の性など、衝撃的な内容と読める物語性が高い作品を残しています。作品数も多く、芸術性あふれる文章により谷崎文学として国際的にも評価が高く、いまでも充分いに楽しめる作品を残しています。
- 団鬼六: 団鬼六は、SM文学の先駆者として知られています。『花と蛇』をはじめとする彼の作品は、緊縛や調教といった要素を通じて、登場人物の心理的な変化や成長を描いています。
しかし自分も登場人物も多くストーリーも長いので『花と蛇』はまだ完読していません。
強い女性が調教地獄にハマる時代劇風の作品もあり『鬼ゆり峠』『お柳情炎』『緋桜のお駒』などもお薦めです。
これらの作品は、SMを通じて人間の深層心理に迫り、読者に新たな視点を提供しています。その他にも、SMの文化を構築されたとする『奇譚クラブ』などをあげないといけないのでしょうが、題材が多すぎるので別の機会したいと思います。
3. 漫画におけるSM
これらの作品は、SMを単なる性的な嗜好として描くだけでなく、キャラクターの深い心理描写や物語の展開において重要な役割を果たしています。特に最近ではもっと広がりを見せているかと思いますが一例としてあげます。
代表的な例の作家と作品
- 『ナナとカオル』 by 甘詰留太
『ナナとカオル』は、甘詰留太によるSMをテーマにした青春ラブコメディです。高校生のナナとカオルの二人が、SMプレイを通じて互いの絆を深めていく様子を描いています。この作品は、SMというテーマを扱いながらも、キャラクターの成長や関係性の変化に焦点を当てており、読者に感情移入を促します。ナナとカオルの純粋で真摯な関係が、SMの要素を一層引き立てています。 また自分はそれぞれのタイトルが面白くて好きです。
- 『監獄学園(プリズンスクール)』 by 平本アキラ
平本アキラの『監獄学園』は、男子生徒が女子生徒に支配されるユーモラスでエロティックな学園ドラマです。物語は、男子学生たちが女子学生会に捕らわれ、過酷な罰を受けるという設定を中心に展開されます。コミカルな描写とシリアスなシーンが巧妙に織り交ぜられ、どしらかというと女性支配の男子M的な要素がストーリーに刺激と緊張感を与えています。この作品は、笑いとエロティシズムの絶妙なバランスが魅力です。
- 『SとM』 by 村生ミオ
『SとM』の主人公は、Mと称される家庭を大切にする真面目な会社員、戸田 誠。彼は日常生活では平凡な男性ですが、ある日、復讐に燃えるSと称される女性・天海 沙耶美樹とにしくまれる。復讐のため近づこうとしていた、沙耶の策略通りに肉体関係を持ってしまった誠は平穏な日常を、1人の女性の出現によって徐々に壊れていく。サスペンスでもあるが、人間の性欲、性描写の描写も多く、本能と理性、夫婦や家族の結びつきもテーマになっています。
4. SM描写の影響
日本のポップカルチャーにおけるSMの描写は、社会にさまざまな影響を与えています。
社会的影響としては
- タブーの解放: SMの描写が増えることで、性に対するタブーが徐々に解放され、性に対する多様な見方が広がりつつあると思います。
- 心理的探求: SMを通じて、個人の深層心理や欲望に対する理解が深まりました。これにより、人間関係や自己理解の新たな視点が提供されてきました。
文化的影響
- アートの多様化: SM的な要素は、映画、文学、漫画などの作品において新たな表現方法を生み出し、アートの多様化に寄与しました。縄アートもその一つかと思います。
- 国際的影響: 日本のSM文化は海外にも影響を与え、特に緊縛(Shibari)は国際的に人気が高まっています。これにより、日本文化の一側面として国際的な認知度が向上しました。
まとめ
日本のポップカルチャーにおけるSMの描写は、ただの性的趣向の表現に留まらず、人間の深層心理や関係性の探求手段としても重要な役割を果たしています。映画や文学、漫画におけるSMの描写は、社会的タブーの解放や文化的な多様化に貢献し、国際的な影響力も持っています。今後もSMがどのように表現され、どのような影響を与えるのか楽しみではありますが、 一方SMを単に暴力的振るうことや、扱われたりすることと認識されてしまい、単に快楽の道具となってしまわないよう注意が必要です。自分やこうして発信する側も、そうならないよう注意していかなければいけないと思います。