雪村春樹が遺した縄の流儀⑥

雪村流と現代緊縛の違い

雪村流について考えたいのが
他の「緊縛」とくに現在の動画配信でみられるような「緊縛」との差についてです。

ただ、ここで誤解してはいけないのは、

“どちらが上か”とか”どちらが良い”

という話ではないということです。

個人の趣向違えば、
求められる表現も変わります。

そのうえで、
雪村流と現代の他の緊縛には、
かなり大きな違いがあります。

それは、

「誰のために縄を見せているのか」

という視点です。

現代の緊縛は、
“第三者に見せる表現”
として発展した部分があります。

動画。
写真。
SNS。
イベント。
ショー。
海外公演。

つまり、

「外からどう見えるか」

が非常に重要になった。

だから現在の緊縛では、

シルエットの美しさ。
空中姿勢。
構図。
身体ライン。

そうした“視覚芸術”としての完成度が重視されます。

実際、
現代緊縛は海外では
「Shibari Art」
として扱われることも少なくありません。
こちらも私は非常に興味がありますので、本当にそれはそれで良いものたど思います。

一方で雪村流は、
かなり閉じた空間の縄でした。

“見せるため”というより、

「その場にいる二人の感情」

が中心にある。

だから雪村流では、
第三者視点の美しさより、

“縛られている本人がどう感じるか”
“縛られている側と縛る本人の対話”

が重要視されていたように思えます。

ここは非常に大きな違いです。

現代緊縛では、
完成された姿勢を維持することが重視される場合があります。

ですが雪村流では、
途中で崩れる。
姿勢が乱れる。
感情が揺れる。

そうした“不安定さ”が消されない。

むしろ、
そこに色気が存在していました。

また、
雪村流と現代緊縛では、
「縄の意味」そのものも違います。

現代緊縛では、
縄は“造形”として扱われることがあります。

身体に線を描く。
空間を構築する。
美しい形を作る。

これは非常に芸術的です。

ですが雪村流では、
縄はどちらかというと、

“心理を動かすための装置”

でした。

つまり雪村流では、
縄目そのものより、

・どこを触られるか
・どう見られるか
・どう恥ずかしくなるか
・どうしたら感じさせられるか

の方が重要だった。

だから同じ縛りでも、
雪村流は「感情」が先に来る。

現代緊縛は「構造」が先に来るように見えます。

そんな違いがあるようにも感じます。

さらに興味深いのは、
雪村流には“大正・昭和的な空気”が強く残っている点です。

たとえば、

和室。
畳。
障子。
着物。
薄暗い照明。

そうした空間の中で、
縄が行われることが多かった。

これは単なる演出ではなく、
日本的な「隠された羞恥」と非常に相性が良かったのでしょう。

現代緊縛は、
スタジオ的で、
海外アートに近づいていった。

一方、
雪村流は最後まで、

“密室の日本的空気”

を残していた。

だから海外では逆に、
雪村流に「古い日本」を感じる人も少なくありません。

実際、
海外の緊縛コミュニティでは、
雪村流は単なるロープテクニックではなく、

“erotic psychological tradition(心理的官能文化)”

として語られることがあります。

つまり雪村流は、
単なるSM技術ではなく、

「日本独特の羞恥文化・恥の文化」

まで含めた表現だったのかもしれません。

また現代緊縛では、
安全性や理論体系が非常に重視されています。

これはとても重要な進化です。

ですが逆に、合理化されすぎたことで、

“感情の曖昧さ”

が薄れた部分もあるのかもしれません。

雪村流には、
説明できない空気が残っている。

理屈ではなく、
感情が先に来る。

だから今見ても、
どこか「人間臭さ」が残っているのでしょう。

現代緊縛が
“見せる縄”
へ進化したのだとしたら、

雪村流は最後まで、

“感じさせる縄”

だったのかもしれません。


雪村流と現代緊縛の違いを感じやすい参考作品

雪村流の特徴は、
技術や造形だけではなく、

・心理描写
・羞恥
・沈黙
・関係性

を重視している点にあります。

現代の緊縛と見比べると、
空気感の違いがかなり感じられるかもしれません。

▼ 雪村春樹 関連作品

縄日記2 磔美人

榊なち

300円


次回は、

「なぜ雪村流は女性人気が高かったのか」

について、
もう少し掘り下げてみたいと思います。

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